調査の概要
カナダで学んだ後に永住者になった留学生について、学んだ分野と就いた仕事の一致度(以下「適合率」)を統計調査がまとめました。対象は2011年から2021年に永住権を得た人たちです。調査はStatistics Canada公表で、Youjin ChoiさんとLi Xuさんによる分析です。一般に学歴が高いほど適合率は上がり、特に最高学歴をカナダで取得した場合に効果が大きい傾向でした。
学びと仕事の一致:医療系が最も高いです
医療系プログラムの卒業生は、STEM分野やビジネス・経営分野の卒業生よりも、学んだ内容と仕事の適合率が大きく上回りました。ビジネス・経営は適合率が最も低い層でした。主要3分野の平均適合率は次のとおりです。
分野 | STEM | ビジネス・経営 | 医療 |
---|---|---|---|
適合率 | 43.0% | 35.2% | 56.7% |
STEMを細分化しても、医療系の適合率は平均で上回りました。
分野(STEM内訳) | 理学・理学技術 | 工学・工学技術 | 数学・コンピュータ・情報科学 |
---|---|---|---|
適合率 | 23.9% | 47.3% | 47.9% |
学士未満の課程では、STEMやビジネス・経営の適合率が特に低い傾向でした。一方、医療系は学士課程で最も高い適合率でした。
カナダで最高学歴を得た留学生とカナダ出生者の比較
STEMでは、最高学歴をカナダで取得した留学生の適合率が、同世代のカナダ出生の卒業生より16%高かったです。逆に、医療やビジネス・経営では、留学生の適合率がカナダ出生の卒業生より低めでした。
全ての学歴レベル | 適合率(最高学歴がカナダ) | 適合率(カナダ出生の卒業生) |
---|---|---|
STEM | 47.9% | 31.9% |
理学・理学技術 | 26.9% | 15.0% |
工学・工学技術 | 53.8% | 40.0% |
数学・コンピュータ・情報科学 | 51.3% | 44.4% |
ビジネス・経営 | 37.6% | 44.8% |
医療 | 57.5% | 65.8% |
STEMは適合率が低くても就業は堅調です
STEM卒業生は医療系より適合率は低いものの、失業率は観察した中で最も低く、就業面は堅調でした。職業スキル水準はカナダのNOC(国家職業分類)のTEERで区分され、TEER0が管理職などの最上位、TEER1が大学学位を要する職、TEER5が短期の実演で可能な職です。
就業結果(2011~2021年の集計割合) | STEM | ビジネス・経営 | 医療 |
---|---|---|---|
2020~2021年に就業なし | 5.3% | 7.7% | 8.0% |
学んだ分野に一致(当該分野の職) | 43.0% | 35.2% | 56.7% |
関連職(厳密一致ではないが関連) | 4.8% | 1.5% | 1.0% |
ビジネス関連(TEER4・5除く) | 8.5% | 35.2% | 4.4% |
医療 | 2.0% | 1.0% | 56.7% |
その他(上記以外) | 36.4% | 49.3% | 27.4% |
TEER0・1(高スキル) | 11.9% | 12.6% | 7.5% |
TEER2・3 | 12.9% | 15.8% | 7.5% |
TEER4・5(低スキル) | 11.5% | 20.9% | 12.4% |
適合しなかった場合でも、STEMは中スキル(TEER2・3)に就く割合(12.9%)が低スキル(TEER4・5、11.5%)を上回った唯一の層でした。医療は高スキルと中スキルが同率(各7.5%)で、低スキルは12.4%でした。
適合しない場合の転職先の傾向
学んだ分野に一致しない人は、STEM・ビジネス・医療の三分野以外の職に移る傾向が強いです。割合はSTEMで36.4%、ビジネス・経営で49.3%、医療で27.4%でした。低スキル(TEER4・5)への移行は各分野でおおむね1~2割でした。ビジネス・経営卒は三分野の中で最も「その他」職種に移る可能性が高く、他分野(STEMや医療)からビジネス関連職へ移る人も一定数いました(STEMから8.5%、医療から4.4%)。
最高学歴の取得場所と適合率の関係
最高学歴をカナダで取得したかどうかは、全ての分野で適合率の上昇と結びついていました。効果が最も大きいのはSTEM(+16.2ポイント)で、医療は影響が小さめ(+1.5ポイント)でした。
分野 | 全体(留学生卒) | 最高学歴がカナダ | 最高学歴がカナダ以外 |
---|---|---|---|
STEM | 43.0% | 47.9% | 31.7% |
理学・理学技術 | 23.9% | 26.9% | 16.9% |
工学・工学技術 | 47.3% | 53.8% | 32.1% |
数学・コンピュータ・情報科学 | 47.9% | 51.3% | 40.1% |
ビジネス・経営 | 35.2% | 37.6% | 29.0% |
医療 | 56.7% | 57.5% | 56.0% |
学歴レベルと適合率
STEMとビジネス・経営では、学歴レベルが高いほど適合率が上がりました。医療では学士が最も高く、学士超はやや下がりました。
分野 | 学歴レベル | 適合率 |
---|---|---|
STEM | 学士未満 | 21.9% |
学士 | 39.6% | |
学士超 | 53.1% | |
ビジネス・経営 | 学士未満 | 19.3% |
学士 | 38.4% | |
学士超 | 44.6% | |
医療 | 学士未満 | 53.8% |
学士 | 62.1% | |
学士超 | 51.6% |
カナダで学んだ留学生とカナダ学歴のない移民の比較
留学後に永住した人は、カナダでの学歴がない移民よりも適合率が大きく高い傾向でした。
全ての学歴レベル | 適合率(最高学歴がカナダ) | 適合率(最高学歴が国外) | 適合率(カナダ学歴なし移民) |
---|---|---|---|
STEM | 47.9% | 31.7% | 30.1% |
理学・理学技術 | 26.9% | 16.9% | 13.7% |
工学・工学技術 | 53.8% | 32.1% | 31.4% |
数学・コンピュータ・情報科学 | 51.3% | 40.1% | 39.4% |
ビジネス・経営 | 37.6% | 29.0% | 25.2% |
医療 | 57.5% | 56.0% | 49.3% |
参考サイト
Study in Canada options
https://www.canadavisa.com/study-in-canada-options.html
TEERの説明
https://www.canadavisa.com/noc2021.html#matching
NOC 2021
https://www.canadavisa.com/noc2021.html
CIC News
Healthcare graduates top STEM and business peers for career success among study-to-immigrate cohort(英語)