競争激化の中でも留学経験の価値は上がっています
2024年から2025年にかけて、Express Entryと州推薦制度の選考は一段と競争的になっています。それでも、カナダで学ぶことは永住権取得で明確な優位性を生みます。国内学歴はCRS加点、就労許可の選択肢、雇用主との接点、州推薦の学卒枠など複数の面で効果を発揮します。
カナダで学ぶ主なメリットと効果
メリット | どのように有利になるか |
カナダ国内の学歴によるCRS加点 | カナダの高等教育課程を修了すると、CRSの追加点で最大30点が加算されます。 |
スキル移転性(Skill Transferability)の加点 | PGWPで得たカナダ就労経験と語学力・学歴の組み合わせで、このセクションから最大100点を狙えます。 |
PGWPとブリッジング・オープン・ワークパーミット | 卒業後にPGWPで就労経験を積み、CECの対象になりやすくなります。PR申請後はBOWPで審査中も就労を継続できます。 |
雇用主とのネットワーキング機会 | 就職イベント、Co-op、コミュニティ団体を通じて雇用主との接点が増え、職探しが有利になります。 |
州推薦(PNP)の留学生向けストリーム | 多くの州に留学生・卒業生向けの枠があり、要件を満たすと指名で大幅な加点やPR申請機会が得られます。 |
採用市場での評価向上 | カナダの学歴・就労経験を評価する雇用主が多く、競争市場で優位に立てます。 |
事例:マリアの「学ぶ→働く→移民」ルート
フィリピン出身のマリア・イダルゴさん(仮名)は、事務職の海外経験1年を経て、21歳でカナダ移民を志しました。2019年にトロント大学の心理学学士(4年)に合格し、学生許可で渡航しました。在学中はNGOで夏季インターン(2か月)を経験し、2023年に卒業後、3年有効のPGWPを取得しました。
PGWPでNGOのコミュニティ支援職としてフルタイム就労を開始し、1年の就労後に認定語学テストを受験。カナディアン・エクスペリエンス・クラス(CEC)でExpress Entryプールに登録しました。職種がヘルスケア・ソーシャルサービス系に該当するため、職種別カテゴリー選抜の対象にもなりました。
就労3年目にExpress Entryの招待(ITA)を受け、永住権(PR)申請を提出してAOR(受理通知)を取得しました。PR審査中に就労を切らさないよう、BOWPを申請して合法的に働き続けました。
マリアのCRSスコア内訳(卒業2年後の例)
項目 | 内容 | 点数 |
年齢 | 26歳 | 110 |
学歴 | 学士(Arts) | 120 |
公用語(英語) | CLB 9 | 124 |
カナダ就労経験 | 2年 | 53 |
スキル移転性(合計最大100点) | ||
語学+学歴 | CLB 9+学士 | 50 |
(カナダ就労+学歴) | 3年のカナダ就労+学士 | |
語学+海外就労 | CLB 9+海外就労1年 | 50 |
(カナダ就労+海外就労) | 3年のカナダ就労+海外就労1年 | |
追加点 | ||
カナダでの就学 | 4年制学士 | 30 |
合計 | 537 |
この水準であれば、直近のヘルスケア・ソーシャルサービス職種カテゴリー選抜(CRSカットオフ470)に十分届きます。2025年のCECドローの多く(執筆時点で518~547)にも概ね対応できるスコア帯でした。
「学ぶ→働く→移民」が有効な理由
追加点での差別化:国内学歴はCRSの追加点で1~2年課程で15点、3年以上で30点が付与されます。選抜ラインが上がる局面では、この差がITAの可否を左右します。
PGWPとBOWPで就労を中断させません:PGWPは最長3年のオープン就労許可で、幅広い雇用主での就労が可能です。PR申請後にAORを得たらBOWPで最長2年の就労継続ができ、審査中もキャリアとCRS加点(カナダ就労)を積み上げられます。
スキル移転性で最大100点:語学力×学歴、語学力×カナダ就労、海外就労×カナダ就労などの組み合わせで大きく加点されます。国内学歴とPGWP就労はこのセクションの伸びに直結します。
在学中から雇用主アクセス:有効な学生許可があれば、学期中は週24時間、定められた休暇中はフルタイムでの就労が可能です。学内外のジョブフェアやCo-op、地域団体を通じて職務経験と人脈を築けます。
州推薦(PNP)の学卒枠:各州のPNPには、州内で学んだ留学生・卒業生向けストリームがあります。例としてオンタリオのEmployer Job Offer: International Studentでは、オンタリオの熟練職種での恒常フルタイム雇用オファーがあれば指名の道が開けます。
雇用主の評価:カナダの学歴・実務経験を重視する採用は多く、現地就学・就労の組み合わせは選考で有利に働きます。
競争力の確認と底上げ
まずは自身のCRSスコアを算出し、直近のカットオフと比較して競争力を把握します。不足があれば、語学力の引き上げ、追加の学歴、カナダ就労の積み増し、州推薦の活用など改善策を検討します。
参考サイト
Express Entry概要
https://www.canadavisa.com/express-entry.html
学生許可(Study Permit)
https://www.canadavisa.com/canadian-temporary-study-visa.html
語学要件(認定テスト)
https://www.canadavisa.com/language.html
カナディアン・エクスペリエンス・クラス(CEC)
https://www.canadavisa.com/canadian-experience-class.html
Express Entryのカテゴリー別選抜
https://www.canadavisa.com/eecategories.html
ブリッジング・オープン・ワークパーミット(BOWP)
https://www.canadavisa.com/bridging-open-work-permit.html
ヘルスケア・ソーシャルサービスのカテゴリー選抜の例
https://www.cicnews.com/2025/08/canada-holds-second-express-entry-draw-of-the-week-3-0858821.html
PGWP対象プログラムの目安
https://www.canadavisa.com/pgwp-eligible-study-programs.html
州推薦プログラム(PNP)全体像
https://www.canadavisa.com/provincial-nomination-program.html
オンタリオ州(OINP)国際学生向け雇用主オファーストリーム
https://www.canadavisa.com/eligibility-requirements-for-the-ontario-provincial-nominee-program-opportunities-ontario.html
CIC News
Is study, work, and immigrate still a viable route to Canadian permanent residency?(英語)