犯罪歴がある場合に起こること
カナダ市民でない人は、過去の出来事でも現在進行中のものでも、犯罪歴があると入国を断られる可能性があります。軽い違反に見える内容でも、カナダ法で同等の犯罪として扱われると「刑事上の入国不可」にあたることがあります。判決を終えていても、カナダ法での位置づけや公共の安全への影響が見られます。
具体例:米国市民のDavidさんは4年前に飲酒運転で有罪となり、罰金・1年の免許停止・講習を3年前にすべて終えました。米国では軽犯罪扱いでしたが、カナダでは2018年以降、酒気帯び運転等は「重大犯罪」として扱われています。事前の対策なしで国境に来ると、初犯でも入国不可と判断され、入国拒否や一定期間の入国禁止命令につながることがあります。
ステップ1:自分の記録がカナダ法でどう見られるかを把握します
最初に、自分の違反・犯罪が「発生当時」にカナダの刑法で何に当たるかを確認します。発生国の法律とカナダ刑法を照らし合わせ、同等犯罪の区分を判断します。入国審査では、次のいずれかとして評価されます。
Criminality(比較的軽い区分)
- カナダ法で起訴可能犯罪(indictable)に当たる有罪判決が1件、または略式(summary)相当が2件以上ある場合です。
- 海外で行った行為が当時その国で犯罪かつ、カナダでも起訴可能犯罪に当たる場合です。
起訴可能犯罪は米国のフェロニーに近い重い犯罪、略式は米国の軽犯罪(ミスディミナー)に近い軽い犯罪です。軽微な略式相当が1件だけの場合は入国不可とならないこともありますが、同等性の判断が重要です。
Serious criminality(重い区分)
- 海外での犯罪が法定刑で懲役10年以上に当たる、または
- カナダでの犯罪が最長懲役10年以上、もしくは実刑が6か月超である場合です。
ハイブリッド犯罪(略式・起訴可能のいずれとしても扱える犯罪)は、移民審査上は起訴可能犯罪として扱われます。海外の行為がカナダでハイブリッド相当なら、入国不可のリスクが高まります。
ステップ2:状況に合う入国の道を選びます
自分の違反がカナダ法でどの区分かを把握したら、次の3つの方法から検討します。どれが最適かは、違反の重さ、完了からの経過時間、再犯リスクなどで変わります。大会が近づくと審査が混み合う見込みのため、早めの手続きが安全です。
選択肢A:一時入国許可(Temporary Resident Permit/TRP)
TRPは、入国不可の人でも「やむを得ない目的」があり、その必要性が公共の安全上のリスクを上回ると判断される場合に、期間を限って入国を許可する裁量的な許可です。ビジネス会議、家族の急用、結婚式などが例です。サッカー観戦だけでは、担当官が「やむを得ない目的」と見なさない可能性があり、却下リスクがあります。専門家に相談して提出内容を整える人が多いです。
有効期間は1日から最長3年まで、単回・複数回のいずれもあり得ます。期限が切れたら延長はできず、一度出国する必要があります。
申請の目安
- ビザ要否国の方は、現地のカナダ査証オフィスでビジタービザとTRPを同時に申請します。
- eTA対象国の方は、居住国のカナダ査証オフィスでTRPを申請します。
- 米国市民・米国グリーンカード保持者は、領事館または国境(空・陸・海)で申請できますが、国境での判断は完全裁量で不許可のリスクがあります。
- 通常、完備した申請の受理後おおむね30日程度で処理開始の目安です。政府手数料は239.75カナダドルです。
選択肢B:みなしリハビリ(Deemed Rehabilitation)
判決の全て(罰金・保護観察・社会奉仕など)を終えてから十分な期間が経つと、自動的に「みなしリハビリ」と扱われ、入国不可が解消される場合があります。これは重大犯罪には適用されません。単一の起訴可能犯罪なら完了から10年、略式相当なら完了から5年が一般的な目安です。
正式な申請書は不要で、国境やビザオフィスで認められることがあります。不安がある場合は、大使館・領事館で無償の適格性評価を受けられます。米国内居住者は国境で評価を受けられる場合があり、手数料がかかることがあります。
リーガルオピニオンレターの活用
犯罪歴がある場合、弁護士のリーガルオピニオンレターを用意すると、みなしリハビリに当たる根拠や安全性を明確に示せるため、入国許可の可能性が高まります。レターには、論点、入国を許可した場合のリスク、該当するカナダ法規、入国可と判断できる理由などが整理されます。TRPや刑事的リハビリの申請補強にも使えます。
選択肢C:刑事的リハビリ(Criminal Rehabilitation)
刑事的リハビリは、認可されると対象の犯罪に関して恒久的に入国不可が解消される制度です。みなしリハビリに当たらず、判決の全てを終えてから5年以上経過している人が対象です。重大・非重大のいずれにも使えます。審査では、生活の安定、良好な素行、再犯リスクの低さなどが見られます。
処理には1~2年かかることが多く、2026年大会の初戦(6月12日)までに結論が間に合わない可能性があります。ただし、刑事的リハビリの条件を満たし申請中であることは、TRP審査で好意的に受け取られることがあります。政府手数料は、非重大の区分で239.75カナダドル、重大の区分で1,199カナダドルです。
観戦前に確認する2つの手順
- 自分の記録がカナダ法で何に当たるかを確認します。
- TRP/みなしリハビリ/刑事的リハビリのうち、該当し得る方法を選び、必要書類を早めに準備します。
参考サイト
犯罪歴がある人のカナダ訪問ガイド
https://www.canadavisa.com/visiting-canada-with-a-criminal-record.html
一時入国許可(TRP)
https://www.canadavisa.com/canadian-temporary-resident-permit.html
みなしリハビリ
https://www.canadavisa.com/canadian-immigration-deemed-rehabilitation.html
刑事的リハビリ
https://www.canadavisa.com/immigration-criminality-rehabilitation.html
コーエン移民法律事務所
https://www.canadavisa.com/cohen-immigration-law.html
リーガルオピニオンレター
https://www.canadavisa.com/legal-opinion-letters-inadmissibility-canada.html
刑事的リハビリ(個別)
https://www.canadavisa.com/canadian-immigration-individual-rehabilitation.html
CIC News
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