結論:多くの人は納税や申告は不要です
血統でカナダ市民になっても、米国に住み続ける人の多くはカナダでの年次申告や納税は不要です。カナダは市民権ではなく「どこに住んでいるか」で税金の対象を決める国です。米国に住み続け、カナダの収入や強い生活のつながりがなければ、状況は変わりません。
ポイント:税務上の居住は何で決まるか
カナダ歳入庁は、家や配偶者・パートナー、扶養家族などの「居住のつながり」を重く見ます。市民権は判断材料の一つに過ぎません。市民権証明書を受け取っても、それだけでカナダの申告義務は生まれません。
よくある4つのケース
| 状況 | 考え方 | 税金の扱い |
|---|---|---|
| 米国に住み続け、カナダの収入や資産がない | 市民権だけでは義務は生まれません | 米国の確定申告のみです |
| 米国に住み続けるが、カナダの収入や不動産・投資がある | その収入にカナダの課税や源泉徴収がある場合があります | 受け取り前・売却前に条約や税率を確認します |
| 米国納税者のままTFSAやFHSAを保有 | カナダでは非課税でも、米国では課税・申告が必要な場合があります | 開設前に国境をまたぐ税務の助言を受けます |
| カナダに移住して居住のつながりを作る | 居住中は世界の収入にカナダ課税。米国の申告も継続 | 両国の申告を調整します |
注意:本文は一般的な情報で、税務アドバイスではありません。両国で収入・資産がある人は、米加の申告に対応できる専門家に相談してください。
二重課税になりますか
米国は市民に対し、どこに住んでいても世界の収入に課税します。カナダは「居住」に基づいて課税します。米国にとどまり、カナダの収入がなければ米国の申告だけです。カナダに移住すると、同じ収入が両国の申告に載ることがあります。
この重なりには、米加租税条約と外国税額控除の仕組みが用意されています。同じ収入に対して片方で払った税金を、もう片方で控除できる場合があります。ただし、所得の種類や発生地、控除・計上の時期の違いで差額が出ることもあります。
カナダ市民になっても米国の退出税はかかりません
カナダ市民になること自体で、米国の退出税は発生しません。退出税は米国市民権を放棄したときなどに対象になります。米国とカナダは二重国籍を認めているため、両方の市民権を持っても米国市民権は失われません。
米国に住み続ける場合にカナダ課税が生じる要因
多くの人は何も変わりませんが、「カナダ源泉の収入」には注意が必要です。カナダにある不動産の家賃、土地や建物の売却益、カナダ発行の投資からの収入などは、非居住者でもカナダで課税されることがあります。支払者が源泉徴収を行う場合や、非居住者申告が必要な場合があります。
家系の調査で、未精算の遺産や名義のままの不動産、古い別荘などが見つかることもあります。税金の問題になる前に、権利関係を整理することが大切です。米国の申告は引き続き必要で、カナダの口座を持つ場合は米国の報告ルールが適用されることがあります。
カナダへ移住したときの税金の変化
移住すると状況が一変します。税務上の居住者になった日以降、その年の居住期間に対応する世界の収入にカナダで課税されます。米国の申告は通年で続き、両国での申告が必要です。
居住開始日を記録してください。多くの資産は、その日の時価がカナダでの取得価額になります。米国の原価と数値がずれることがあるため、両方の記録を残します。
移住初期は、米国側で「外国税額控除」と「外国勤労所得除外(FEIE)」のどちらが有利か検討します。FEIEは居住テストか滞在日数テストを満たすと、2026年分で最大132,900米ドルの勤労所得を米国課税から外せます。ただし、除外した所得には外国税額控除を使えません。年ごとに有利不利が変わるため、複数年で試算することが大切です。
カナダで利用できる主な制度は、RRSP(2026年の限度額は33,810カナダドル。個人の枠により上下します)、TFSA(年間7,000カナダドル)、FHSA(年間8,000カナダドル、通算40,000カナダドル)です。TFSAとFHSAはカナダでは非課税ですが、米国では非課税扱いにならず、課税や追加報告の対象になることがあります。口座開設前に助言を受けることをおすすめします。
のちにカナダを出る場合、居住終了時に未実現の値上がりに対して課税(いわゆる出国時課税)が発生することがあります。市民権の有無は免除理由になりません。
実務イメージ
米国にとどまる場合は、市民権証明書は単なる身分の書類で、年次のカナダ申告は通常不要です。ただし、カナダ源泉の収入があると、その収入に対しカナダ課税や源泉徴収が及ぶことがあります。
カナダへ移住する場合は、両国で申告し、条約や税額控除を使って二重課税を調整します。国境をまたぐ税務は調整が大切です。不動産の売却、口座の開設、居住地の変更の前に、両国の申告に対応できる専門家へ相談することが有効です。
参考サイト
CIC News
Do Canadians by descent living in the U.S. have to pay Canadian taxes?(英語)